むくみの原因
浮腫・むくみは簡単に言うと、新陳代謝の時に血液と組織の間で行われる物質交換がうまく行かない症状です。
新陳代謝は血管中の血液から酸素や栄養を取り入れ、組織からの老廃物や二酸化炭素を血液またはリンパ液として再び血液循環系へ戻してやる行為です。様々な理由で老廃物などを血管系・リンパ系に戻すことができずに組織の間に積み残しが起こってしまうことが「むくみ」です。これは病気が原因であったり、疲労や体調不良などで毛細血管の透過性が変化するなど、体の状態の変化によって起こるものです。
病的なむくみの原因としては腎臓や心臓系の疾患が挙げられます。顔や脚のむくみが長期間続くときは医師の診察・検査を受け、治療を受ける必要があります。蛋白質欠乏などの栄養障害、ホルモンの変化に起因するもの、静脈やリンパ管排液の障害・低下など、他の原因も考えられます。
リンパ器官切除なども無く、検査の結果特に原因が考えられない、一時的もしくは数日間続く脚のむくみの場合は生理的なむくみと考えられます。様々な理由で組織間に老廃物の積み残しが起こってしまうのです。地球上に重力があり、人間が立って行動している限りは心臓より下にある部分からの血液や体液が戻りにくいため、脚がむくみ易いのは仕方のないことと言えます。健康な場合は体の機能が正常に働いているので一時的な負担の増加をカバーすることが出来るのでむくみが発生することなく生活していけますが、立ち続け・座り続けなど同じ姿勢を取り続けることで排出する機能に負担がかかるとむくみが発生します。脚が夕方や就寝前にむくむが、一晩寝ると無くなっている。立ち仕事でむくむが、脚を高く上げていると改善される。このような場合は一般に生理的な「むくみ」と考えられます。静脈瘤などと同じように「むくみ」を還流させる機能が低下しているこのような場合、軽い運動によって改善が期待できます。軽い圧のサポートストッキングも効果的といえます。
むくみの状態が治療方針の手掛かりになることもあります。むくみは全身性か部分的か。片側性か両側性か。一時的か継続的か。むくみが柔らかいか緊張性かなどを確認する必要があります。
「リンパ浮腫」はリンパの器官が傷ついたり、切除されたりした場合に老廃物を排出する能力が低下して起こる「むくみ」です。一部リンパ管の再生が可能であるとはいえ、症状が出た場合には全く元通りに戻ることは困難であるとされています。しかし、良い状態に持って行き、それを維持して行くことは可能です。手術による静脈との吻合術がありますが、保存的療法としてリンパドレナージュを含んだ「複合理学療法」もあります。
顔などのセルフマッサージの方法もご紹介してあります。
◎むくみの治療
腎臓疾患による「むくみ」はしばしば顔面や瞼に現れます。心臓疾患による場合はフクラハギや足首などに見られます。特定の病気によるむくみはその病気の治療がむくみの治療になります。また、高齢の方で運動をされない場合は脚全体に「むくみ」が現れることも多くあります。この場合は軽い運動でむくみが減る場合もありますが、蛋白質欠乏などの栄養障害や静脈やリンパ管の排液障害・能力低下の場合も考えられます。まずは体の状態を正確に把握することが大切であり、運動の代わりにリンパドレナージュの使用でむくみの軽減に有効なこともあります。女性ホルモンは「むくみ」と関係していて、生理の時にホルモンの変化に起因した「むくみ」が発生・増強することもあります。生理的に仕方のない事とは言えますが、この場合には補助的にマッサージ、リンパドレナージュも効果的です。
「むくみ」は細胞の間に水分(組織液・間質液)が停滞している状態と言えます。押すとへこみ、跡が残る状態です。液体は簡単に移動するので、一部分を押して柔らかくなると「むくみ」は改善したように感じますが、実際にはすぐに戻ってしまいます。
一晩寝てしまえば回復する場合や、横になって脚を心臓より高く脚を挙げる事が一番の回復法である場合、圧迫ストッキングの着用も効果的です。この様な疲労・負荷によるむくみは、リンパドレナージュ・オイルマッサージを含むマッサージやハリでも対応可能です。
一方で漢方的に言えば、病気とまでは言えないけれど臓器の働きが低下してむくみが発生する場合もあります。鍼灸では「腎」や「冷え」が関係していると考え、昔からむくみ取りのツボを多用しています。鍼灸がむくみの場合に効果を上げる場合も多くあります。
むくみ、どう対処する?
「むくむ」という症状の原因はいろいろあって、お医者さんの治療を必要とする「むくみ」もあるので簡単に考えてはいけませんが、体調の変化などによるものも多いので具体的にどう対処するかというヒントを挙げてみたいと思います。
飛行機の中でのむくみは気圧が低くなる事が原因です。更にじっと座っている時間が長いので筋肉運動が少なくなり、特に下肢からリンパ液を送り出すポンプ作用の補助が減少することもむくみを増加させます。この対策は「エコノミークラス症候群」とほぼ同じで、座っている時に足首をバタバタと上下させたり、回したりすることです。フクラハギに力を入れて硬くさせたり、時々立ち上がって歩き回るなども必要です。サポートストッキングを着用して乗り込むのも有効です。飛行機から降りてからは少し歩き回り、ベッドでは足を少し高く上げて横になるなどのことは多く行われています。マッサージはどの様なやり方のマッサージでも有効ですが、やはりリンパマッサージ(ドレナージュ)が一番効率的といえます。
これは飛行機だけでなく、自動車・バスに長時間乗る旅行のケースも同じです。高速道路ではこまめに休憩をとり、サービスエリアなどで車外に出て歩き回ることも必要です。
高齢の方のむくみのケースは先ず筋肉運動の不足が挙げられます。動きが少ないため筋肉の収縮が不足してポンプの補助が不足してしまいます。これも足首の運動を取り入れ、自分で動かす自動的運動が理想ですが、他動的でも良いので下肢を運動させることが対処法になります。時に皮膚が光沢を持ってピカピカしていたり、柔らかいむくみであることもある高齢の方へのマッサージは強すぎることは禁物です。軽めのマッサージもしくはリンパマッサージが適応です。高齢の方のむくみの場合は時に「栄養不良」のためにむくむこともあるので、むくみの様子をよく把握する必要があります。栄養不足によるむくみは運動やマッサージでは解消されません。
顔がむくむケースでは風邪や体調不良、睡眠不足などのために起こりがちです。顔がむくむケースは顔面へのリンパマッサージが有効で、セルフマッサージも行いやすいのでセルフマッサージのページを参考に行ってみてください。もちろん原因の治療も必要ですが、応急的な処置法と言えます。
女性が生理の前や期間中にむくむケースは、ホルモンと関係しているのでむくみ部位のマッサージという対処療法になります。この場合、鍼灸治療が効果的なケースも多くあります。
むくみ治療の理解
上にも述べている通り、「むくみ」の原因は様々です。
1、心不全や腎不全などでは、静脈の緊張亢進を伴った血液量の増加が認められるケース
2、静脈やリンパ管自体の排出障害のケース
3、外傷による充血、ホルモン性の充血
4、外傷、感染、ホルモン性で起こる毛細血管透過性の亢進
5、蛋白質欠乏症のケース
などが考えられます。
原因が様々なので対処法も違ってきます。お医者さんに診察してもらうことは大前提ですが、治療法は異なります。
1、医師の治療のみでリンパドレナージュを行ってはいけないケース
2、リンパドレナージュが効果的なケース
3、リンパドレナージュを行っても効果が期待できないケース
があります。
また、リンパ液の流れに影響する要因は次の通りです。
①リンパ管に点在している「歩調取り細胞」が行う、リンパ管自体の自発的な収縮。これはリンパドレナージュで刺激することができます。
②自律神経(特に副交感神経系)
③ヒスタミン、ブラディキニンなどの組織ホルモン
④フランク‐スターリングのメカニズム
⑤筋肉ポンプ・関節ポンプ
⑥呼吸
⑦心ポンプ
⑧リンパ管と並走している動脈の拍動
などです。
原因と対処法をきちんと理解して治療しなければ効果的な「むくみの軽減」は期待できません。
リンパドレナージュ・マッサージ
手のタッチと動き方
リンパドレナージュがマッサージする場所は、体の表面のすぐ下の皮下組織とそこにあるリンパ管です。日本の普通のマッサージは筋肉を目標としているので、それと同じ感覚でグイグイとやってしまうのはNGです。皮膚に手や指を平らにピタリと当て、皮膚の上を滑らない程度の軽い圧を保ったまま、皮膚や皮下組織を一緒に動かし(スライド・ずらし)ます。皮膚の上をさすることもNGです。ですからリンパドレナージュにはオイルやクリームは使用しません。服の上からドレナージュすることもNGです。お肌に直接手や指を当てて行うことが基本です。
手を動かす時には1回に1秒かけ、同じ場所を5回程度マッサージしたらすぐ隣の場所へ移動し、この動作を繰り返します。円を描きながら皮膚と皮下組織を同時に動かす感覚がつかめればOKですが、「百聞は一見に如かず」、きちんとしたドレナージュをどこかで体験できれば簡単に納得できます。
施術する部位に力が入っていたり、緊張しているのもNGです。皮膚や皮下組織が動きにくくなって効果的でなくなるので、リラックスした状態や体勢で行いましょう。イスや台・テーブルなどを利用することも考えられます。手の届かない部分や、やりにくい部分もあるので、ベッドなどに横になった状態で施術を受けることが本当は理想的ではあります。つまり、誰かにしてもらうことが本来です。
リンパドレナージュはマッサージする部分の状況に応じて、指先を使ったり、手の平全体を使ったりと臨機応変です。使い分けることが大切です。わきの下などのクボミは指先で、背中やお腹の広くて平らな部分は手の平で、といった具合です。施術するのはツボのような点ではなく面で、直接皮膚に触れてスライド・ずらしを加えます。「セルフケアテクニック」も参照してください。
プラス治療コース
脚のむくみにアプローチ
上に挙げたように特に病気ではない「むくみ」に対処するために、オストでは「プラス治療コース」の中でも「脚のむくみ」用のコースを用意しています。
Bコース)マッサージで体の調子を整えた上で、脚のオイルマッサージをプラスします。通常のマッサージの中でも脚をマッサージしますが、その部分をオイルを使ってマッサージを行います。
Dコース)同様にマッサージで体の調子を整えた上で、リンパドレナージュをプラスします。オイルとの違いは、リンパ管を活性化しリンパの取り込みを増加させる作用があり、柔らかな刺激で副交感神経優位に導き、リラックス効果ももたらします。
Eコース)体のマッサージを行わず、両脚のリンパドレナージュを行い、両膝下の部分を圧迫弾性包帯で巻き、軽い運動を指導します。「むくんだ脚」に集中的に施術します。即効性はありますが、維持には圧迫を繰り返す必要があるケースがあります。