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11)下肢のセルフケア

11)下肢のセルフケア

下肢のセルフケア



下肢の浮腫の場合に注意すること
浮腫の方が怪我をしないように注意することが大切なのは共通です。下肢・脚は横になっている時以外は、リンパの最終輸送場所である心臓より下に位置するので健常な方でもむくみ易い部位です。足首をくじいたり捻挫をしやすかったり、水虫にかかり易かったりするので注意が必要です。
 
①足に合った形の靴を選ぶ。高いヒールや細身の靴は避ける。
②素足で歩きまわらない。水泳の時は傷つきやすいので注意する。
③しもやけ・凍傷に注意する。
④深爪に注意し、あま皮・ささくれも常にきれいにしておく。
⑤水虫に注意する。かかってしまった場合はすぐに治療する。
⑥かかとのひび割れを起こさないように注意し、保湿クリームで保護する。
⑦正座や足に負担がかかる姿勢をとらない。
⑧部分的にきつく締め付ける下着・コルセットを着けない。
⑨長時間同じ姿勢を続けない。
⑩旅行などで長時間座り続ける場合はこまめに休憩を取り、歩き回るように心がける。
⑪体に負担でなければ、脚を少し高くして就寝する。
などがあります。いわゆる「エコノミークラス症候群」と同様の注意です。


運動法


下肢の浮腫の際にも圧迫テーピングやストッキングをはきながら軽い運動をすると効果的です。
疲れを感じるまでする必要はありません。20~30分で結構です。
目的は色々な関節を様々に動かすことですから、特に決まった運動はありませんが、下肢・脚の運動の際にはバランスを崩して倒れないように何かにつかまったり、座った状態で行う事もあります。具体的には、
 
①膝や腿を高く上げて歩く・足踏みする。
*椅子や床に座って
②足首の曲げ伸ばし、グルグル回す。
③足の趾を開閉する。
④膝の曲げ伸ばし。
⑤床に座って脚全体を床に押し付けるように力を入れる。
*仰向けに寝て
⑥自転車をこぐように回転させる(逆回しも)。
⑦脚を少し上げる。
などがあります。
 
下肢セルフマッサージの基本は上肢の基本の部分と同じです。
リンパ浮腫の治療の時にセルフケアも大切ですが、症状が厳しい場合や浮腫を減らしていく場合では、セルフだけでは効果が上がらない場合も多くあります。良い状態を維持したり、予防的にマッサージを行うにはセルフは適しています。上手に使い分ける必要があります。 
リンパ浮腫のセルフマッサージについて、ドイツ・フェルディの本を参考にまとめてみます。
 共通
セラピストは様々な手技を使いますが、「皮膚と皮膚の下にある皮下組織を引き伸ばすこと」が基本で共通しています。
多くの人が「さすりあげる」方法でセルフマッサージを教わっているのですが、「皮膚の上を擦るのではなく、円形に皮膚と皮下組織を排液方向に引き伸ばすことでリンパ管の活動を強化し、リンパ管の拍動を速め、浮腫液を意図する方向へ導くことが出来る」ことが基本です。「さすって、流す」イメージでないことに注意が必要です。
 
フェルディではセルフマッサージの手技の練習に円を描く手技を基本にしています。
〇皮膚の上に直接、力を抜いた状態の手を、大きく当ててゆっくりと円形に動かします。
〇その時に、皮膚の上を滑り動いたり、さすったりせず、円の動きに合わせて組織自体をずらします。
〇次のステップは円の動きの2つの段階を身につけることです。
〇少しだけ力を加える「ずらし段階」と、その力を抜くと自然と開始位置まで戻ってくる「緩め段階」です。
〇「ずらし段階」で円の半分を描くまで手に力を少しだけ加えて組織を押しずらします。
〇「ずらし段階」の時に、適切な排液方向へ向かう習をします。
〇手が半分まで達したら力を抜く「緩め段階」に移り、ずらした皮膚が自然に元の状態に戻ろうとするのと一緒に手はついていきます。
〇開始位置まで皮膚が戻ったら、再度手技を開始し、繰り返し行います。
 
 適切な排液方向とは、リンパ液をどこのリンパ節へ誘導し、そのためにはどのルートが相応しいのか選択するということです。これはケースバイケースですので、個々の状態によって違いがあります。
手技は数秒かけてゆっくりと行い、8から10回繰り返します。施術する部分から次の部分に移る際には、施術した部分が赤くなっていないか(充血していないか)を確認する。赤い場合には施術が強すぎた証拠になります(フェルディによる)。
 
まとめ:
〇大きな面で手をそっと当てる
〇皮膚とその皮下組織をずらし、決して皮膚上を滑らせない
〇ずらす時は排液方向へ向かう
〇一カ所で8から10回程度繰り返す
〇施術する部分は端が重なり合う
〇ゆっくりとしたリズムで行う
〇充血させない(皮膚を赤くさせない)