治療のヒント4) 手・腕・肩
4-1 手のシビレ・だるさ
手のしびれ・痛みは首に原因があることが多いのは御存じの通りですが、腕の筋肉の緊張が原因である場合も経験します。腕のだるさなどの疲れは普段意識することが少なく、マッサージなどで触られてみて初めて手や腕の疲れを自覚するケースは意外と多くあります。パソコンを長時間使用する方は指先を酷使し、腕自体も長時間、軽くとはいえ緊張を強いられます。同時に肩も、引き上げる状態を維持するために拳上されています。手で握る動作・指でキーを叩く動作や肘を曲げる動作は屈曲する筋肉や腱の疲労につながります。疲れを取るためには屈曲する筋肉や腱のストレッチ、つまり伸ばしてあげるのが一番良い方法です。指であれば反対側の手を使って反らしたり、腕を伸ばして指先だけ机に着けて軽く体重をかけるなどの方法があります。肘から上の腕の後側や、肘から手首の間の筋肉を時々つかんでみて、疲労度合いを確認することも必要です。これらの部分が張っていると手のしびれや痛みに発展することがあるからです。また、手の平は自分でマッサージしやすい場所ですので、親指の付け根のふくらみ部分や小指から手首にかけてのふくらみを中心にマッサージしてみましょう。
4-2 五十肩?
いわゆる五十肩(四十でも六十でも)で来院される方があります。英語で言う「フローズンショルダー」で、原因はいろいろですが肩が上がらないという症状でひとまとめにしてあります。放っておいても一年程で痛みが無くなるとも言われていますが、服の袖を通せないなど生活に不自由が発生します。痛みの程度も色々で、一部の動きが制限されるだけの場合もあります。症状によっては腕や肩の筋肉の緊張が関係しているだけのことも少なくありません。その場合は腕全体の緊張をとるマッサージや痛みのポイントにハリやお灸をすると軽減されます。先ずは前後方向や横方向のどの動きが痛みを感じるか、どの位置まで上げると制限されるかを確認し、それから関係する筋肉の緊張を緩和してみると意外と動きがスムーズになります。五十肩に似ているが軽度の運動制限である場合は比較的早く回復します。また背中や頚の緊張が関係していることもあるので、広い範囲で緊張を確認する必要もあります。もちろん重症の場合はそれほど簡単に回復しませんが、ハリやお灸で回復が早まることも多く経験します。
4-3 肩甲骨周囲
肩甲骨の周囲の不快を訴えられる方が多くいらっしゃいます。コンピューターの画面を長時間見て、作業をされることが多くなった事が大きな原因です。動物である人間はやはり動かなくてはいけないのでしょう。動くことで血液循環が良くなり、筋肉の収縮も促進され、様々な刺激によって肉体の活動が活発になります。大きな動きが少なくなることで、筋肉の伸びが抑えられ、関節の動く範囲も縮小されます。これがコリを招き、肉体の悪循環をもたらすことになります。運動が大切なのはもちろんですが、悪循環を好循環に変えるには何かのキッカケが必要です。マッサージやハリなどはそのキッカケの一つです。こういった運動不足によるコリの他に、神経的なストレスも背中や肩甲骨周囲のコリの原因となります。背中の緊張は睡眠不足や不眠を誘発し、それがまた睡眠を妨げるという悪循環をもたらします。体と精神は相互に関係し合っているので、背中や肩甲骨周囲の緊張が解けると精神的にも安定します。この逆も同様です。また、春先に多い花粉の飛散による花粉症もこの部分のコリを増加させる場合があります。運動性のものと比べて緊張緩和するのは難しいと言えますが、ここの部分の緊張緩和は症状の緩和に役立つことも経験します。特に鼻の疾患に対しては背中の肩甲骨周囲のツボを多く使用します。これに頭のツボを加えて治療すると花粉症には効果的と言えます。
4-4 バネ指
大まかに言えば、バネ指は指を動かす靭帯が肥大してそれを包む腱鞘に引っかかってしまうものです。少し動かすと引っかかりが取れて動かしやすくなる比較的軽症のものから、指をつかんで動かしてあげないと伸びない厳しいものまで、状態は様々です。引っかかりの部位を触って肥大化した部位を触知できるものです。
軽症のバネ指は引っかかる部位に針を刺した状態(置鍼といいます)にして、数分後針を抜き、その点にお灸をします。お灸は米粒程度に「もぐさ」を丸め、同じ場所で5回から7回繰り返します。皮膚の上に直接置くやり方です。お灸をした跡が一週間程度残ることもありますが、その後は消えることがほとんどです。
バネ指は指の使い過ぎで起きるため、腱が通っている手首や腕も張っていることがほとんどです。そのため治療に際しては三角筋・上腕の筋肉・前腕の筋肉もハリかマッサージをしてあげると一層効果的です。
軽症の場合はこのような治療で指が比較的早期にスムーズに動くようになることを経験しています。
指をつかんで動かさないと伸びないケースは回復に時間がかかります。治療したケースを例に挙げれば、引っかかる部位に針を刺した状態にして、数分後針を抜き、その点にお灸をするのは同じです。お灸も米粒程度に「もぐさ」を丸め、同じ場所で5回から7回繰り返し、皮膚の上に直接置くやり方をすることもありますが、「もぐさ」を固く糸状にひねるやり方もとります。その場合、お灸の部位は瞬間的に普通のやり方より熱く感じます。これは1回程度にします。腕や手などにもハリやマッサージを行います。最初は2週に1度の治療をしますが、次の治療までの間は自宅で1日に一度自宅でできる簡単なお灸をしていただきます。2か月程で動きは良くなりますが、カクカクといった引っかかり感は続いたままでした。その後は月に1度の割合で同じ治療を繰り返しました。この期間は指を多く使った時には引っかかり感が出るが、比較的スムーズに動かせる状態でした。これが6回過ぎたあたりで違和感がほとんど無くなり、自宅でのお灸も終了となりました。
バネ指の場合は、寒い時や冷たい水仕事、多く使った時などに引っかかりが出てきやすいため、温めるなどの対策をとることも大切です。
注意することとしては、患部を力任せにマッサージすると逆に炎症を起こして組織を硬くさせたり肥大させたりして、悪化させてしまうこともあるので患部を刺激しすぎることは避けなければなりません。慎重に取り扱う必要があります。手術などの治療が必要なケースもあるため、お医者さんの指示に従うことは大切です。