治療のヒント2) 腰痛に関連して
2-1 かかとの痛みと腰痛
自分の経験ですが、ある朝突然かかと付近が痛くなって足を床に着けることが出来なくなりました。ふくらはぎやアキレス腱が伸びない感じです。腰の痛みは感じませんでしたが、腰痛持ちの自分としては腰からの影響だと感じました。腰と同時にひざ裏の腱付近を集中的に治療してもらうとどうにか足が着けるようになり、その後は腓腹筋のストレッチを続けて回復しました。腰から下の体の関係はとても緊密で、痛い部分だけを治療しても効果が無い場合も多くあります。かかとの痛みの場合も痛みのある部分だけでなく、関連する部分も同時に治療することが必要といえます。
腰痛の時には大腿部からひざ裏、アキレス腱にかけてのラインも極端に緊張状態、つまり張った状態になりやすいものです。大腿後側が硬くなり、ふくらはぎが伸びなくなり、ふくらはぎの筋肉が付着するひざ裏やアキレス腱付近に痛みを感じるようになります。関節痛や骨の痛みの様に感じるケースも出てきます。
腰痛を実感していなくても坐骨神経痛や膝痛、かかとの痛みが出現する場合もありますが、実は腰筋や背筋も緊張していることがあります。まずは、腰や脚の後側の緊張緩和をしてみて、痛みが楽になるかどうかを確かめてから原因がどこにあるのかをみるのも良い手順です。それで痛みが軽減されるならば腰の治療を中心として、脚の後側のラインの緊張緩和をする治療をします。
2-2 背骨と姿勢
御存じのように背骨(脊椎)は自然なカーブを作っていて、頭などの重さを逃す構造になっています。ですからこのカーブが真っ直ぐになったり曲りがきつくなってしまうと、重さを逃すことが出来なくなって首・肩のコリや腰痛の原因になります。正しい姿勢を保つことはそれらの病気の予防になります。
また、脊椎は回転したり曲げたりするための運動装置であり、直立する時に体を支える安定装置でもあります。脊椎間にある椎間板は椎骨の間のクッションの役割をします。椎間板には血管が通っていないので、脊椎を包んでいる髄液から栄養を補給しなければなりません。栄養補給が出来にくくなると椎間板というスポンジは硬くなり、椎間板ヘルニアなどにも関係して来ることになります。髄液を動かして栄養補給をさせ易くするためにも、背骨を動かすこと、つまり運動が大切なのです。同じ姿勢を続ける事が多い場合には時々姿勢を変えたり、軽いストレッチなどの運動が予防の観点からも大切となってきます。
2-3 腰痛の前兆
腰痛は突然症状が現れる場合と、「腰が重いな」などと感じていて症状が徐々に厳しくなってくる場合があります。腰痛の原因は色々あって、鍼灸マッサージでは対応できないものも数多くあり、正確には整形外科で診断してもらう必要があります。鍼灸マッサージで対応できた方に限れば、突然腰痛になった方でも質問をすると腰自体の重だるさや痛み以外に、その前から兆候と思われる症状を思い出されるケースがあります。コラムの「かかとが痛い」はその一部です。その他、「お尻が張っていた」「お尻を自分でたたいていた」「フクラハギが張っていた」「脚の引き上げが悪かった」「スネの筋肉がパンパンだった」「膝が痛んだ」「腿の外側が張っていて、自分で軽く叩いていた」「股関節の開きが悪かった」「腿の内側のスジが硬かった」などがあります。直接的に腰の症状が現れるわけではないのですが腰痛の前兆と言えます。慢性の腰痛をお持ちの方でこのことをご存じ方も多くいらっしゃいます。これが自覚できにくい場合もありますが、いち早く自覚して治療することで厳しい状態へ移行することを防ぎます。普段から体調に注意していることが大切です。
2-4 悪い姿勢
背中の筋肉の緊張がアンバランスなケースでは悪い姿勢となります。治療ポイントにも書いてあるように、調子の悪い部分・疾患の反射が体の表面に出ている場合も多くありますが、同じ姿勢を続けていてその筋肉の緊張具合が脳に記憶され、意識しなくてもその状態が続いてしまうことも原因の一つです。筋肉は筋紡錘というセンサーによって無意識に筋肉の「力の入り具合」が保たれていることで、特に意識しなくとも立ったり座ったりなどの姿勢を保っていられるのですが、反面では「悪い緊張具合」を記憶してしまうとなかなかその状態から抜け出せないものです。良い姿勢だったのに怪我をして一時的にバランスが悪くなり、怪我の状態が良くなっても姿勢が悪いままであるケースはこの状態と言えます。脳が無意識下で記憶したこの状態を良い記憶に変えるために、1か月ほどは常に意識して良い姿勢を保っていると、無意識でも意外とよい姿勢を保てるようになるものです。もちろん、調子の悪い部分を治療する必要もありますし、怪我や疲労からの回復も大切であることは言うまでもありません。
2-5 腰痛の予防
腰痛の予防と再発防止については色々と書かれていますが、効果の上がったものを紹介したいと思います。目標は筋肉のストレッチと腹筋の強化です。今現在、腰に痛みを感じている方が行える軽い方法ですが、痛みを感じる場合は行わないでください。
①仰向けになり両膝を抱えて背中を丸める。②仰向けになって両膝を立て、背中全体を床面に押し付けるように力を加える。③仰向けになって両膝を立て、首をあげて自分のおへそを覗き込む。これでも意外と腹筋に力が必要なことが分かります。④横向きになり、上側の脚を前方に出し、上側の肩は反対に床に着けるように体をひねる。ひねりは出来るところまでで止めて筋肉の緊張を感じながら10秒ほどその状態をキープする。
痛みが無くなり、通常の膝を立てながらの腹筋運動を行う事が出来ることが理想です。